アーネスト・エバンス・シリーズ|クトゥルフ神話を下地に描かれる異色のアクション三部作

ゲームシリーズ
© 1991 ウルフチーム All Rights Reserved.

本記事では、日本テレネットから発売されたアクションゲーム三部作「アーネスト・エバンス」シリーズを詳しく紹介します。開発を手がけたのは「ウルフ・チーム」。彼らが織りなす独自の世界観と、クトゥルフ神話を土台にした物語は、ゲームファンのみならずホラーやミステリー好きのプレイヤーをも魅了してきました。本シリーズは年代順ではなく、物語の前後が作品ごとに異なる点も注目すべき特徴です。この記事では、各作品の背景や物語、キャラクター、ゲームシステム、評価などを深掘りしてお伝えします。

シリーズの概要

シリーズの概要
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『アーネスト・エバンス』シリーズは、日本テレネットより発売されたウルフ・チーム開発によるアクションゲーム三部作です。クトゥルフ神話を基盤に、20世紀初頭のアメリカや架空のヨーロッパを舞台とし、人智を超えた邪神の力と、それに翻弄される人間たちの物語が描かれます。時系列的には『アーネスト・エバンス』が最も過去を描き、次に『エル・ヴィエント』、最後に『アネット再び』と続きます。シリーズを通して登場するアネット・メイヤーは、神の末裔としての宿命を背負いながらも、強い意志で運命に抗い成長するヒロインとして描かれます。作品ごとに異なるアクション性と世界観が魅力で、重厚なストーリーと個性的なキャラクターたちが織りなすドラマが、今なお根強いファンの支持を集めています。

シリーズの魅力

クトゥルフ神話と20世紀初頭の融合が生み出す、唯一無二の世界観

クトゥルフ神話と20世紀初頭の融合が生み出す、唯一無二の世界観
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アーネスト・エバンス・シリーズが持つ最大の特徴の一つは、作中に漂う独特の神話的世界観と、それを現実の歴史背景と巧みに融合させている点にあります。物語の核には、H.P.ラヴクラフトが創造した「クトゥルフ神話」があり、邪神ハスターやナイアルラトホテプといった古の存在が物語の中心に据えられています。こうした神話的な存在は、単なる敵役として描かれるのではなく、血筋や儀式、信仰といった形で人間の世界と深く関わっており、キャラクターたちの運命や行動に大きな影響を及ぼしています。

このような神話的要素を背景にしながら、舞台は実在した時代や地名とリンクしています。例えば『エル・ヴィエント』では禁酒法時代のアメリカが舞台となり、ギャングのボスであるアル・カポネが実名で登場し、ハスター教団と手を組んで暗躍するという大胆な設定が物語を動かします。このように実在の歴史と神話的フィクションを交差させる手法は非常にユニークであり、プレイヤーにとっては現実と非現実の境界が曖昧になるような、不思議な没入感を生み出しています。

クトゥルフ神話と20世紀初頭の融合が生み出す、唯一無二の世界観
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また、『アネット再び』では舞台が一転し、中世風のヨーロッパに類似した架空の世界へと移ります。そこでもネグゼシスという軍事政党と神話的存在の陰謀が絡み合い、時代や国を超えた神話の影響力の強さを感じさせます。これにより、シリーズ全体を通じて「人知を超えた存在と、それに翻弄される人間たち」というテーマが貫かれており、世界観に統一感と深みをもたらしています。

こうした構築は、単にホラーやファンタジーとして消化されるのではなく、歴史的な重厚さと神話的な恐怖が同時に味わえるという、他に類を見ない体験へと昇華されています。ウルフ・チームのシナリオライティングと設定構築の巧みさは、このシリーズの持つ最大の魅力のひとつと断言できます。

アクション性の高さと多様なゲーム性の変化

アクション性の高さと多様なゲーム性の変化
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アーネスト・エバンス・シリーズは、三部作すべてがアクションゲームというジャンルで統一されていますが、各作品ごとにゲーム性が異なっており、プレイヤーに異なるアクション体験を提供してくれます。その変化と多様性こそが、このシリーズを語る上で欠かせない要素です。

第一作目にあたる『アーネスト・エバンス』では、鞭を使った戦闘とアニメ調の演出が特徴的でした。アーネストのモーションには当時としては珍しい多関節アニメーションが採用され、キャラクターの動きが非常に柔らかく、人間らしい挙動を表現しています。これがプレイヤーにとっては新鮮でありながらも、操作にクセがあるという両義的な評価に繋がりました。ただし、その試み自体が他作品ではあまり見られない独創的なものであり、テクニカルな挑戦として高く評価されるべき部分です。

続く『エル・ヴィエント』では、操作キャラクターがアネットへと交代し、ゲームはプラットフォーム型の高速スクロールアクションとなります。ステージ構成はシンプルでありながらも、戦闘のテンポが非常に速く、魔法とブーメランというユニークな武器の組み合わせによって、爽快感あるプレイが可能となっています。魔法の取得によって戦術の幅が広がる成長要素もあり、アクション一辺倒にならない工夫が見られます。ステージごとに異なる敵やボスの演出も豊富で、ゲームにバリエーションを持たせることに成功しています。

アクション性の高さと多様なゲーム性の変化
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最後の『アネット再び』では、シリーズ初のベルトスクロールアクションが採用され、より近接戦闘を重視した設計となりました。アネットは肉体的に成長し、前作以上に力強く戦う戦士となっており、ステージの敵数も増加、複数の敵を相手にする戦闘が基本となります。攻撃パターンや演出もより洗練され、シリーズの集大成とも呼べる完成度を誇ります。

このように、作品ごとに異なる操作性やアクション性が楽しめることは、シリーズを通してプレイする大きな動機になります。単なる続編としてではなく、毎回新たなチャレンジとゲーム体験をもたらしてくれる点が、このシリーズのもうひとつの大きな魅力です。

魅力的なキャラクターと濃密な人間ドラマ

魅力的なキャラクターと濃密な人間ドラマ
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アーネスト・エバンス・シリーズが今なお語り継がれる理由のひとつに、登場人物の個性の強さと、彼らが織りなす人間ドラマの深さがあります。主人公や敵対者はもちろん、脇を固めるキャラクターまでもがしっかりとした背景を持って描かれており、プレイヤーに強い印象を残します。

まず、シリーズを通して最も成長が描かれているキャラクターがアネット・メイヤーです。彼女はハスターの末裔という運命を背負いながらも、自らの意志で戦うことを選びます。『アーネスト・エバンス』では守られる立場だった少女が、『エル・ヴィエント』では戦士として自ら道を切り開くようになり、さらに『アネット再び』では独立した英雄として、国家間の陰謀にまで立ち向かう存在へと成長していきます。こうしたキャラクターの変化は、ただの設定ではなく、物語の進行を通じて丁寧に描かれており、プレイヤーは彼女の人生をともに歩んでいるような没入感を味わうことができます。

対する敵側のキャラクターも実に魅力的です。ジーク・フリートのように悲しき過去を持つ敵、アル・カポネのように実在の人物を大胆にフィクションに取り込んだ存在、さらには偽王女のような権謀術数を巡らす裏の主役たちまで、それぞれがストーリーの中で重要な役割を担っています。彼らは単なる「悪役」ではなく、時に主人公たちと対比されることで人間性を浮き彫りにされており、物語に奥行きを与えています。

魅力的なキャラクターと濃密な人間ドラマ
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また、声優陣の豪華さも特筆すべき点で、矢尾一樹、皆口裕子、堀川亮、鶴ひろみ、銀河万丈といった名だたる声優たちが、キャラクターに命を吹き込んでいます。その演技はシリアスな場面をより引き立て、ゲームとしてのドラマ性を何倍にも高めています。単にアクションを楽しむだけでなく、ドラマを味わいたいプレイヤーにとっても、このシリーズはまさに理想的な舞台です。

シリーズの一覧

アーネスト・エバンス

アーネスト・エバンス
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アーネスト・エバンス(メガCD専用)|メガドライブ (MD)|ウルフチーム|レトロゲームから最新ゲームまで検索できるゲームカタログのピコピコ大百科
ウルフチームより1991年12月20日にメガドライブのメガCD用ソフトとして発売されたアクションゲーム。主人公の冒険家アーネストを操り、洞窟や遺跡を探検する冒険活劇となる。標準装備の武器はムチだが、落ちているアイテムを使って攻撃することも…

シリーズの中では時系列的に最も過去の物語を描いている本作は、1991年12月20日にメガCD向けにリリースされました。タイトルと同じく、主人公は若きトレジャーハンターのアーネスト・エバンス。武器として鞭を使用するスタイルは、どこか往年の冒険映画を彷彿とさせます。

物語の舞台は20世紀初頭。ペルーの奥地で巫女として暮らしていた少女アネット・メイヤーが、生贄として命を狙われていたところを、アーネストが救出します。以後、彼女は彼の養女として共に行動するようになり、物語は二人の旅路を軸に展開されていきます。

アーネストの冒険の中で立ちはだかるのは、シカゴマフィアのボスであるアル・カポネや、邪神ハスターを崇拝する教団、そして謎めいた生物兵器の青年ジーク・フリート・ミュンヒハウゼンといった多彩な敵たちです。彼らの目的は、古代の力を呼び覚まし、この世を混沌に導くこと。アーネストは仲間と共に、この陰謀に立ち向かっていきます。

アーネスト・エバンス
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演出面では、当時としては珍しいフルボイス演出やアニメ調のカットシーンが盛り込まれ、プレイヤーに強い没入感を与えました。ただし、キャラクターのモーションに独特の癖があり、操作感には賛否が分かれたのも事実です。しかし、世界観の深さやストーリーのスケールの大きさは、後のシリーズ作品の土台となる重要な役割を果たしました。

エル・ヴィエント

エル・ヴィエント
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エル・ヴィエント|メガドライブ (MD)|ウルフチーム|レトロゲームから最新ゲームまで検索できるゲームカタログのピコピコ大百科
ウルフチームより1991年9月20日にメガドライブ用ソフトとして発売されたアクションゲーム。全部で9つあるステージには、それぞれボスがいる。アネットはブーメランと魔法を駆使して戦うという設定であり、このうちブーメランには発砲制限のようなも…

時系列では『アーネスト・エバンス』の後、1928年のアメリカを舞台にした本作は、1991年9月20日にメガドライブ用ソフトとしてリリースされました。ジャンルとしてはプラットフォーム・アクションゲームに分類され、全8ステージ構成で、それぞれのステージに個性的なボスキャラが待ち受けています。

プレイヤーが操作するのは、前作にも登場したアネット・メイヤー。彼女はかつてハスター教団から救出された過去を持つ少女で、今や風の魔法を駆使し、邪神の血を引く戦士として自ら戦いに身を投じる存在となっています。武器はブーメランと魔法で、ブーメランは無制限に使用可能、魔法はゲームを進行する中で習得していくシステムです。最終的に彼女は5種類の魔法を覚え、戦術の幅が大きく広がります。

ストーリーの中心には、ハスター教団による邪神復活の計画があります。彼らは再びハスターをこの世界に呼び戻すため、アネットと同じ血を引く少女レスティアーナを利用しようと企んでいます。この計画にはシカゴマフィアの大物アル・カポネも協力しており、彼らはマンハッタンの中心に神殿を築き、儀式を進めていきます。

アネットは刺客の襲撃を受けながらも、教団に対する反撃を開始。多くの敵やトラップを乗り越えて、レスティアーナを止め、邪神の復活を阻止しようと奮闘します。レスティアーナは最終的に、教団の教祖ヘンリーによってハスター復活のための生贄にされるという、悲劇的な運命を辿ります。

エル・ヴィエント
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本作のサウンドは桜庭統が担当しており、FM音源とPCM音源を巧みに組み合わせたサウンドトラックは、ゲームの疾走感と狂気に満ちた世界観を見事に演出しています。キャラクターデザインは山根和俊が手がけ、独特なビジュアルでプレイヤーの印象に強く残る作品となっています。

評価としては、海外のゲーム誌では高い評価を受けた一方で、一部の批評家からは設定の奇抜さや演出のバランスに対して厳しい意見もありました。とはいえ、その独自性とテンポの良さ、挑戦的なゲーム性は、多くのアクションゲームファンにとって魅力的な要素となりました。

アネット再び

アネット再び
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アネット再び(メガCD専用)|メガドライブ (MD)|ウルフチーム|レトロゲームから最新ゲームまで検索できるゲームカタログのピコピコ大百科
ウルフチームより1993年3月30日にメガドライブのメガCD用ソフトとして発売されたアクションゲーム。『エル・ヴィエント』の続編となる。ステージの画面に奥行きができたことでより深みのあるアクションになっている。ステージは全部で9つが用意さ…

シリーズ三作目となる『アネット再び』は、1993年3月30日にメガCD向けに発売されました。タイトルの通り、主人公は再びアネットへと戻り、彼女の視点で物語が進行します。本作は従来のプラットフォーム型から一新し、ベルトスクロールアクションへとゲームジャンルを変更。より迫力ある戦闘シーンと、敵との接近戦が重視される構成となっています。

アーネストとアネットは、古代の秘宝「二面女神像」の真贋を見極めるため、中世ヨーロッパ風の世界を旅することになります。しかし、彼らの前に立ちはだかるのは、ダーグルシュタインという架空の国に存在する軍事政党「ネグゼシス」。彼らは超近代兵器を導入し、秘宝を用いてさらなる権力を得ようと暗躍しているのです。

王女アイシャは、秘宝を守る立場としてアネットと出会い、協力関係を築きます。しかし、アイシャはバージリスという軍人によって監禁されてしまいます。その背後には、偽王女や様々な陰謀が複雑に絡み合っており、アネットはネグゼシスの野望を打ち砕くため、再び戦いに身を投じます。

アネット再び
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この作品では、アクションの爽快感だけでなく、物語の政治的・歴史的な背景も描かれ、前二作とはまた違った重厚なストーリー展開が楽しめます。さらに、『アーネスト・エバンス』で登場したジークが敵として再登場し、シリーズを通じた因縁が深く描かれている点も見逃せません。

サウンドや演出においても、CD-ROM媒体の利点を活かし、ボイス付きの演出やBGMのクオリティが格段に向上しています。シリーズファンにとっては、アネットというキャラクターの成長とその終着点を見届けるにふさわしい内容となっています。

まとめ

まとめ
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『アーネスト・エバンス』シリーズは、単なるアクションゲームに留まらず、クトゥルフ神話という壮大なテーマを背景にした奥深い物語を持つ、非常にユニークな三部作です。それぞれの作品は独立して楽しめる構成でありながら、シリーズ全体を通して見たときに一貫した世界観が存在し、キャラクターたちの成長や因縁が浮き彫りになります。

ゲーム性の面では、時代背景を反映したステージ構成や、作品ごとに異なるアクションシステムが取り入れられており、プレイヤーに新鮮な体験を与えてくれます。また、アネットという強い意志を持った女性主人公の存在は、当時としては珍しく、今なお評価されるべき点です。

本シリーズは、マイナーながらも根強いファンを持ち、後のゲームやストーリーテリングに多大な影響を与えたと言えるでしょう。ゲーム史において特異な輝きを放つこの三部作は、ぜひ一度体験していただきたい作品です。

アーネスト・エバンス・シリーズの一覧

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