「ナイトゥルース」シリーズは、主にSS用ソフトとして発売されたアドベンチャーゲームです。このシリーズは有名声優を迎え、全5作という壮大な予定で開発が進められました。しかし、1996年8月に第1作『闇の扉』、同年12月に第2作『Maria』が発売された後、1997年に発売元であるバリエ(ソネット)がレイアップに吸収合併され、第3作『二つだけの真実』が発売されたものの、開発は中止となりました。このページではそんな未完成のアドベンチャー「ナイトゥルース」シリーズを解説します。
シリーズの特徴
「ナイトゥルース」はオーソドックスな選択式ADVで、学園を舞台に超常現象に挑む高校生たちの物語です。CERO:B~Cに相当するショッキングな表現を含み、分岐点が前半に集中し、エンディングは4種類存在します。「召喚ルート」「棺ルート」「人体発火ルート」「旧校舎ルート」の大まかな分岐があり、PS移植で追加された旧校舎ルートが特に注目されました。音声は”ほぼ”フルボイスで、特典として開発資料や主題歌をカバーした8cmCDが付属しています。
ゲームの問題点
テキストの問題
ゲームは商業作品の水準に達しておらず、冗長な表現や読みづらい文章が目立ちます。特にゲーム開始後の冗長な寝起きシーンや誤字脱字が多発し、シリアスな展開も文章のせいで緊張感を欠いています。
問題のあるテキストを抜粋
舞璃亜の場所まで走り、舞璃亜に追いつくと舞璃亜の肩をつかんだ。
1時間目の授業が終わると、その後、2時間目、3時間目、4時間目と授業が進み昼休みを挟んで5時間目の授業が終わり6時間目の授業が始まった。
俺は、あまりの興奮のあまり大声で怒鳴りつけてしまった。
とりあえず、この校内に英司とがいることは確かなんだから、取りあえず死因の原因より英司を探すのを先決にしようぜ
俊英は俺達を置いて先に進んでしまいう。
だけどこんなにいつまでしょうがない。
俺達が美樹ちゃん達をつれて戻ってきたころには総ての元凶の元と原因が判明していた。
演出の不足
ゲームの演出は手抜きで、BGMやSEの変化が少なく感情の伝わりにくさが目立ちます。特に人体発火ルートではシナリオとの不一致が明白で、登場人物の感情表現が乏しい点が指摘されています。
シナリオの悪さ
シナリオには伏線の不足や超展開の連発があり、唐突な展開が脈絡なく現れています。ルート分岐も適切に考慮されず、冒頭から伏線が提示され、毎プレイごとに20分近く消費する不親切な構成となっています。
分岐に関する問題
選択肢の出現タイミングが少なく、後半は全く選択の余地がないなど、ゲーム性が薄い点が指摘されています。分岐に応じた整合性も取れておらず、説明不足な登場人物が散見されるなど問題が多いです。
立ち絵のクオリティ
立ち絵のクオリティにも難があり、デッサンの崩れや素人の仕事と見受けられる点が指摘されています。キャラクターの外見と設定が一致していない場合もあり、全体的に問題があります。
セーブ周りの問題
オートセーブが採用されているものの、セーブされた場所の表示がなく、中断から再開するとかなり前まで戻されることがあります。遊び方の制限が多く、エンディングの分岐点が不親切なタイミングに設定されている点が不評です。
ボイスの途切れ
ゲームは途中までフルボイスですが、どのルートも途中から全く声が入らなくなり、特に旧校舎ルートに至っては固有のシーンに全くボイスが無いことが指摘されています。
登場人物
十六夜 慎哉(いざよい しんや)
本作品の主人公で高校三年生。彼は黒魔法や超常現象に詳しく、霊剣セクンダディ(声優: 若本規夫)が封印された指輪を所持している。危機に陥ると指輪を短刀に変形させ、呪文の詠唱によりさまざまな魔法を使いこなすことができる。物語の序盤から黒魔法の要素が描かれ、プレイヤーは自然に「魔法が出てくる話」に引き込まれる構成となっています。
水凪 真璃亜(みずなぎ まりあ)
慎哉を毎朝起こしに来る同級生。格闘に長け、人一倍正義感が強い。治癒能力を持ち、怪我を治すことができる。真璃亜の登場により、物語にはさらなる深みが加わります。
宮上 麗美香(くじょう れみか)
慎哉と同じ高校に通うお金持ちのお嬢様。朝から習い事に通い、一般的な生活とは異なる生活を送っている。陰陽道に長け、結界術を使って悪者を撃退するなど、彼女の登場は物語に独自の要素をもたらします。
常盤 俊英(ときわ しゅんえい)
慎哉の1学年下の天才少年。高校生ながら海外の大学を卒業した博士号の持ち主。特別な力は持っていないが、卓越した頭脳でハッキングや発明をこなす。マッドサイエンティスト的な一面もあり、好奇心旺盛で不法侵入も厭わない。
姫川 藍(ひめかわ あい)
1年生の後輩。精神年齢は10歳ほどで、一見は普通の少女。しかし、一部のルートでは彼女に秘められた不思議な秘密が明かされます。
評価点
人気声優の起用
「ナイトゥルース」シリーズは当時の人気声優を網羅的に押さえており、宮村優子氏や緒方恵美氏などアイドル声優から、若本規夫氏など渋いキャストまで幅広い顔触れが揃っています。この豪華な声優陣が、当時絶大な人気を誇っていたことが一つのポイントとなっています。
特典ディスクの資料価値
特典ディスクには参加声優による顔出しのインタビューが収録されており、ヒロイン3人のキャストが声優になった経緯まで語っています。このディスクは、いちゲームの枠を超えて声優の出自が聞ける貴重な資料となっています。
シリーズの一覧
ナイトゥルース 闇の扉
セガサターン版
セガサターン用ソフトとして発売されたアドベンチャーゲーム。上田裕司、宮村優子、氷上恭子、かないみか、緒方恵美といった当時人気だった声優を起用している。さらにオープニングとエンディングには氷上恭子が歌うテーマソングが流れる。少女が炎に包まれて絶命するというショッキングな事件でこの物語の幕は上がる。それはこれから起こる不思議な世界の入り口だった…。
プレイステーション版
プレイステーション用ソフトとして発売されたホラーアドベンチャーゲーム。学園の怪奇現象に巻き込まれた高校生5人組の活躍を描いたゲーム作品となる。マルチシナリオ&マルチエンディング制を採用し、選択肢によって異なる物語が展開。上田祐司や宮村優子、氷上恭子といった豪華声優陣を採用しており、ミステリー、サスペンス、アドベンチャーと様々な要素が詰まったストーリーを堪能しよう。
ナイトゥルース マリア
セガサターン用ソフトとして発売されたアドベンチャーゲーム。前作「ナイトゥルース #01 闇の扉」の続編となる。タイトル通り登場人物の「マリア」中心の話となる3つのエピソードを楽しめる。サウンドノベルだが本作では前作には存在していた選択肢がなくなり、アニメを見ているような感覚となっている。
ナイトゥルース 二つだけの真実
セガサターン用ソフトとして発売されたアドベンチャーゲーム。同社より発売されていた「ナイトゥルース」シリーズの最終作となった。ゲーム内の声優陣は当時の人気声優を起用しており、ゲーム中はほぼフルボイスで表現されている。ただし、数時間で攻略できてしまうボリューム不足やほぼ一本道のストーリーなど、ユーザーからはシリーズを通して完成度が低いと評価されてしまう傾向にある。
ファンディスク
ザ・メイキング・オブ・ナイトゥルース
セガサターン用ソフトとして発売された。『ナイトゥルース #01 闇の扉』発売前の設定資料データベース。ゲーム内で使用されている、オープニング&エンディングテーマの視聴や登場キャラクターの紹介、キャラクターの原画資料が閲覧できる。また、かないみか、氷上恭子、折笠愛といった本作でキャラクターボイスと担当している声優へのQ&Aも収録されている。
ザ・メイキング・オブ・ナイトゥルース2 ボイスセレクション
セガサターン用ソフトとして発売された『ナイトゥルース』のデータベース。アドベンチャーゲームナイトゥルースの続編に関する映像特典、設定資料や声優インタビューを収録している。キャラクターボイスを担当している声優の氷上恭子のラジオ番組「氷上恭子のエル.ステーション」の映像をはじめ、ナイトゥルースラジオドラマ版の紹介やナイトゥルース3の紹介が収録されている。
ナイトゥルース ボイスセレクション ラジオドラマ編
ソネットから発売されたアドベンチャーゲーム「ナイトゥルース」のファン向けディスク。収録風景の動画や、ラジオのコーナー説明を当時の人気声優である氷上恭子自らが説明した動画。後に発売される「ナイトルゥース」ラジオドラマ出演者のコメント動画などもある。声優のかないみかのナレーションで紹介するナイトルゥースの第三弾の予告も楽しめる。
まとめ
「ナイトゥルース」シリーズは、期待された華やかな予定とは裏腹に、テキストや演出、シナリオの出来に多くの問題を抱えたゲームとなりました。潜在的な良さが伺えるものの、未完成のまま終わった作品として、クソゲーマニアの間で伝説として語り継がれています。
ゲームとしての出来はお世辞にも良いとは言えませんが、その未完成さも含めて一部ユーザーには支持されたシリーズ作品となっています。興味のある方はぜひプレイしてみてはいかがでしょうか?