「デスクリムゾン」シリーズは、エコールソフトウェアが1996年8月9日にセガサターン向けに初登場したガンシューティングゲームです。独特な不条理さや不可解な要素が逆に注目を集め、「クソゲーの帝王」として知られ、後に続編も生まれました。ここではそんな「デスクリムゾン」シリーズについて解説します。
開発の経緯
エコールは本作がセガ・インタラクティブの『バーチャガン』に次ぐガンコントローラー「バーチャガン」対応ソフト第2弾でした。しかしながら、スタッフの不足と無理なアイデア組み込みにより、開発当初からオープニングデモからゲームバランスまでさまざまな問題に見舞われました。その結果、厳しい評価と酷評を受けました。
2018年11月14日には、発売から22年を経て作曲者渡辺邦孝によるサウンドトラックCD「Death Crimson Soundtracks」が発売され、シリーズの歴史を振り返る好機となりました。
ゲーム内容
ゲームは起動すると、プレイヤーを迎えるのは怖さを感じさせるメーカーロゴ画面です。この画面は飛ばすことができず、北海道・洞爺湖の有珠山噴火記念公園にある「月の光」の彫刻を彷彿とさせます。
オープニングデモでは、3DCGで描かれたモンスターや主人公・コンバット越前のプロフィールが登場します。しかし、画面と音のずれや越前の身体の奇妙な描写が目立ちます。実写映像は和歌山市の離島で撮影され、登場キャラクターの声優の演技やシーンの矛盾が特徴的です。
ゲームのシステムは、主人公の視点で3DCGのシーンを移動し、ガンコントローラーを銃に見立てて敵を狙い撃つものです。装填数や進化する銃、「クリムゾン」の特徴などがあり、オプション銃や追い撃ちによるスコア稼ぎも重要です。ステージは3つの選択肢があり、各ステージにはボスとの戦いが待ち受けています。
せっかくだから、俺はこの赤の扉を選ぶぜ!
一番有名なシーンの一つは、物語が進んで廃墟に入り込み、3つの扉が並んでいる場所に到達したときのシーンです。画面が切り替わり、3DCGの扉が開く場面が描かれます。この瞬間、主人公の越前が「せっかくだから、俺はこの赤い扉を選ぶぜ!」と叫びますが、なぜ「せっかくだから」なのか、目の前の扉がどう見ても赤くないのに「選ぶ」と言っているし、3DCGの扉は実際には1つしかないので選ぶ余地もありません。このセリフは理解しにくく、謎めいたものとなっています。
ゲームの問題点
照準
ガンシューティングゲームにおいて、照準の合わせづらさは致命的な問題です。デスクリムゾンでもその典型例であり、ガンコントローラーの照準合わせが1発撃つごとにステージ選択画面に戻るため、効果的な調整が難しい状況が続いています。また、ゲームパッドやマウスでも操作が難しく、特にカーソルの移動速度が速すぎて照準合わせが難しいとの声が上がっています。
画面の描画・演出
封入された説明に反して、ゲームの画面描画や演出が粗く汚いと感じられる点が指摘されています。動きも変であり、前世代のゲーム機を思わせる要素が見受けられます。シーンごとの場所の名前の表示のみで説明が一切なく、移動がうろうろとして回り道が多いため、プレイヤーにとってストレスとなる箇所が多く見受けられます。
撃ってはならない相手
一般人やムササビが敵に混じって登場するが、これらが撃ってはならない相手であることは、ゲーム内外のどこにも説明がない。これが原因でペナルティを受け、進行が難しくなることがある。説明書にも明示されていないため、プレイヤーは混乱を招くことがあります。
進化する銃
「進化する銃」は特殊攻撃が可能だが、通常攻撃は強化されないため、バランスに問題があります。進化させた銃がシーンクリア後に元に戻るため、戦略の構築が難しくなっています。
難易度
照準の合わせづらさ、敵の攻撃の速さ、無敵時間の不在などが複合的に作用し、難易度が非常に高いとされています。クレジットが少なく、特定の敵の攻撃に対しては即死することもあるため、初心者にとっては敷居が高いと言えます。
ゲーム進行のテンポ
ゲームの進行がテンポが悪く、単調であるとの指摘があります。特にゲームオーバー後にメーカーロゴまで逆戻りさせられる仕様は、プレイヤーにとって不便な要素となっています。
オプション設定
オプション設定がサウンド設定しかなく、難易度調整や初期クレジット数の設定ができないため、プレイヤーの好みやレベルに合わせたカスタマイズが難しいとの意見が寄せられています。
説明書などの表記
説明書の文章には統一性がなく、またストーリーが抽象的で理解しづらい箇所が多く指摘されています。また、表記の誤りやハイスコアランキングの不具合など、細かいが重要な問題も散見されます。
シリーズの一覧
「デスクリムゾン」シリーズにはいくつかの作品が存在します。続編としては「デスクリムゾン2 -メラニートの祭壇-」や「デスクリムゾンOX( – オックス)」があり、それぞれ新しい要素やアイデアが導入されました。特に「OX」ではシリーズ初のアーケード版が登場し、ドリームキャスト版、PlayStation 2版にも移植されました。
ただし、「デスクリムゾンOX」では前作の反省を生かして、よりスピーディーな展開と「普通のゲーム」としての評価を得ることに成功しました。シリーズ全体を通して、エコールソフトウェアの試行錯誤やファンの熱狂的なサポートが結実して、個性的で注目を集めるシリーズとなりました。
デスクリムゾン
エコールが1996年8月9日に発売したガンシューティングゲーム。開発スタッフの人数や経験などが不足していた中で、無理に様々なアイデアを詰め込もうとした結果、オープニングデモに始まり演出・画面描画・操作性・ゲームバランスなどゲーム全体に多くの問題を抱えてしまった。ゲーム雑誌のレビューでも厳しい評価となる。その一方で独特の不条理さや不可解な台詞が受け、カルト的人気を博し、エコールの看板ソフトとなった。
デスクリムゾン2 メラニートの祭壇
エコールソフトウェアからドリームキャストで発売された3Dガンシューティングゲーム。正式なジャンル名は「暗黒ギャルゲーシューティング」。『デスクリムゾン』の続編。グラフィック、演出、音楽などは格段に進化した。しかしゲームバランスの悪さやストーリー、仕様の珍妙さなど、やはり前作同様ゲーム情報誌やプレイヤーからは酷評だった。前作のパロディが盛り込まれており、狙って作ったバカゲーに近い内容となっている。
デスクリムゾンOX
ドリームキャスト版
ドリームキャストで発売された『デスクリムゾン2』のシューティングゲームパートを再構成。セガの『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド』の開発を担当した部署の協力を得て、『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド2』の改造キットという形で発売された。ストーリーや敵配置を変更し、難易度をやや低めに設定。「OX」にはゼロ、エックスという意味があり、「ガンシューティングゲームの原点に立ち帰る」という意思が込められている。
プレイステーション2版
『デスクリムゾンOX+』としてPlayStation2に移植されている。『2』のシューティングパートを元に、純粋なガンシューティングとして再構成された。『2』の反省を生かしてスピーディーな展開となり、ようやく「普通のゲーム」として評価された。
まとめ
ゲームは主人公の視点で3DCGのシーンを移動し、ガンコントローラーを銃に見立てて敵を狙い撃つ仕組みで、様々な問題点が指摘されています。特に照準合わせの難しさ、画面の描画や演出の粗さ、撃ってはならない相手の不明確さ、進化する銃のバランスの問題などが挙げられており、完成度の低いゲームとして認知されています。
ただし、「せっかくだから、俺はこの赤い扉を選ぶぜ!」という謎めいたセリフや、ゲーム進行のテンポの悪さ、つっこみどころの多い展開が独特で一部のユーザーからは「クソゲーの帝王」として愛されています。
また、シリーズには「デスクリムゾン2 メラニートの祭壇」や「デスクリムゾンOX」などが存在しています。シリーズ全体を通してエコールソフトウェアの挑戦的なアプローチと、独自の要素が混ざり合い、ゲームファンに多くの印象を残すこととなりました。興味があれば一度プレイしてみてはいかがでしょうか?