1997年と1998年にセガサターン用ソフトとして発売された「メッセージ・ナビ」シリーズは、当時のマルチメディアソフトの先駆けとして登場しました。本記事では、その内容や背景を振り返りながら、時代を感じさせるレトロな魅力を再評価していきます。
「メッセージ・ナビ」シリーズとは
「メッセージ・ナビ」は、1997年11月27日に第1作がシムスよりセガサターン向けに発売されたマルチメディアソフトです。このシリーズは、見て、読んで、そして参加できる新しいメディアとして位置づけられ、「ベストフレンドを見つける新メディア」と銘打たれていました。第1作の好評を受けて、1998年2月19日には第2作も発売されました。
両作品に共通しているのは、1000人分の個人情報、読者投稿によるコーナー、そして多彩なコンテンツが収録されている点です。「投稿ポラ王国」「あのコの住む街」「ホロスコープ」「コスプレ・マーケット」など、まるで雑誌がそのままCD-ROMに移行したかのようなラインナップが特徴的です。
シリーズの特徴
出会いと繋がりを求める時代のメディア
1990年代後半、インターネットはまだ高価で一般家庭には普及しておらず、SNSやブログといった現代のオンラインコミュニケーション手段も存在しませんでした。人々が出会いや情報を求める際には、雑誌や掲示板に頼るしかなかったのです。
「メッセージ・ナビ」も、そうした背景の中で生まれた作品です。当時は「じゃマール」のような雑誌が人気を博し、出会い系や個人間の売買情報が大きな注目を集めていました。「メッセージ・ナビ」は、この流れを受けて、セガサターンというゲームハードを活用し、出会いの場を提供しようとした試みです。
個人情報掲載の危険性と現代の感覚
「メッセージ・ナビ」シリーズでは、1000人分の個人情報が収録されており、これは当時としてもかなり大胆なコンテンツでした。今の基準で考えると、非常に危険な行為であったことは明らかです。しかし、当時はインターネットが普及しておらず、個人情報の扱いに対する認識も今ほど厳しくなかったため、このような試みが成立していたのです。
ゲームソフトに個人情報が含まれているという事実自体が、現代の感覚では考えられないものであり、時代の違いを強く感じさせます。
時代を映し出すコンテンツ
「メッセージ・ナビ」には、出会い情報だけでなく、コスプレ写真集や占いコーナー、さらには街で見つけた可愛い子たちの写真など、多岐にわたるコンテンツが収録されています。これらのコンテンツは、当時の社会や文化を映し出しており、現在のメディアとは異なる独特の魅力があります。
たとえば、「今日は若い女の子にもチョー人気がある東京ジョイポリスをレポートしまーす」というコーナーがあり、当時の若者文化や流行を垣間見ることができます。19歳の学生がレポートを担当しているという設定も、今となっては懐かしさを感じるポイントです。
主要コンテンツの一覧
1000人の個人情報
このソフトの目玉ともいえるのが、1000人分の個人情報を収録したデータベースです。ここには、名前や趣味などのプロフィール情報が含まれており、ユーザーは興味のある相手を見つけることができました。今では考えられないほど大胆な企画ですが、当時はインターネットが普及しておらず、個人情報の取り扱いに対する意識も低かったため、ある意味で時代を反映した内容でした。
投稿ポラ王国
ユーザーが自分の写真やメッセージを投稿できるコーナーです。ここでは、自分自身をアピールしたり、新たな友人や共通の趣味を持つ仲間を見つけることが目的とされていました。
あのコの住む街
地域ごとのユーザーを紹介するコーナーです。各地域ごとのユーザー情報が見られるだけでなく、その地域に関連したコンテンツやおすすめスポットなども収録されており、ローカル情報を楽しむことができました。
ホロスコープ
星座占いを楽しむコーナーです。ユーザーは自分の星座を選び、運勢や相性占いなどを確認することができました。これもまた、個人情報と絡めたコミュニケーションを促す要素として、当時のメディアに多く見られたものです。
コスプレ・マーケット
コスプレファン向けの写真集です。当時、コスプレは一部の愛好者の間で盛り上がりを見せており、そうしたニーズに応える形で、このコーナーが設けられていました。
街でみつけたかわいいコ
街角で撮影された素人モデルの写真を集めたコーナーです。モデルになりたい人々が参加できる形式で、まるでファッション誌のスナップ特集のような趣きがありました。
おススメの人気SPOT!
各地の人気スポットや観光地を紹介するコーナーです。これも、地域情報を充実させるための一環として設けられました。
検索くん
ソフト内の情報を検索できる機能です。これにより、特定のユーザーやコンテンツをすばやく見つけることが可能でした。
シリーズの一覧
メッセージ・ナビ Vol.1
「メッセージ・ナビ Vol.1」は、1997年にシムスからセガサターン用ソフトとして発売されたマルチメディアソフトで、当時の日本における新たな出会いとコミュニケーションの場を提供することを目的としていました。第1作「メッセージ・ナビ Vol.1」は1997年11月27日に発売され、1000人分の個人情報を収録し、ユーザーが自分のプロフィールを公開して友達や仲間を見つけることができる、斬新なコンセプトを掲げていました。また、投稿ポラ王国やコスプレ・マーケットといった多彩なコンテンツも収録され、まるで雑誌の内容をそのままCD-ROMに移したような作りが特徴的でした。
メッセージ・ナビ Vol.2
「メッセージ・ナビ Vol.2」は1998年2月19日にリリースされました。この第2作では、前作のコンセプトを引き継ぎつつ、内容をより充実させ、ユーザーに対する使い勝手の向上が図られました。個人情報データベースも引き続き収録され、投稿機能が強化されるなど、より多くのユーザーが参加できるような改良が施されました。さらに、占いコーナーのホロスコープやコスプレ写真集のコスプレ・マーケットも強化され、時代の流行に合わせた内容が充実しています。
シリーズの評価
「メッセージ・ナビ」は、セガサターンというゲーム機を使って出会い系のメディアを提供するという斬新なアイデアでしたが、残念ながら長続きはしませんでした。第1作の発売後、わずか3か月で第2作がリリースされたものの、シリーズはわずか2号で終了してしまいます。
その理由として考えられるのは、当時のセガサターンの市場シェアがプレイステーションに比べて低かったこと、そして企画自体が時代に先行しすぎていたことが挙げられます。ゲーム機で出会い系というコンセプトは斬新でしたが、ユーザー層とのミスマッチや、個人情報の扱いに対する警戒心が薄かった時代背景もあり、大きな反響を得ることができなかったのです。
まとめ
「メッセージ・ナビ」シリーズは、1990年代の独特な時代背景と技術革新の中で生まれた、非常にユニークなメディアです。今では考えられないようなコンテンツやアイデアが詰まっており、当時の社会や文化を知る手がかりとして、非常に興味深い作品と言えるでしょう。
現代の感覚ではその危険性や無謀さが際立ちますが、同時に、当時の人々がどのようにして出会いや情報を求めていたのかを知る貴重な資料でもあります。このようなレトロメディアを振り返ることで、過去の文化や技術が現在にどのように影響を与えたのかを再確認することができるのではないでしょうか。
メッセージ・ナビシリーズの一覧
