エグザイルシリーズは、1980年代後半から1990年代初頭にかけて、日本テレネットによって開発・発売された異色のアクションRPGです。このシリーズは中世イスラムの世界観と、深い宗教的テーマをベースにした硬派なストーリーが特徴で、プレイヤーに強烈な印象を与えました。この記事では、エグザイルシリーズの詳細な歴史やシステム、ストーリー、キャラクター、評価を徹底的に解説します。
エグザイルシリーズの概要と歴史
エグザイルシリーズは、1988年にPC-8800シリーズおよびPC-9800シリーズ向けにリリースされた『XZR エグザイル 破戒の偶像』から始まりました。この作品は、当時のゲーム業界において異色の存在として注目を集めました。その後、シリーズは続編として『エグザイル 時の狭間へ(XZR II エグザイルII 完結編)』がリリースされ、さらにはPCエンジンでオリジナルストーリーを描いた『エグザイルII 邪念の事象』へと続きます。
エグザイルシリーズは、一般的なRPGとは一線を画した独自のシステムと、深遠なストーリーで知られています。その一方で、ゲーム内で使用されるアイテムに実際の麻薬が登場することや、宗教的・政治的なテーマが大胆に取り上げられている点でも話題となりました。
シリーズの英語表記と展開
エグザイルシリーズの英語表記は、PC版では「XZR」、コンソール版(PCエンジンやメガドライブの海外版)では「EXILE」として知られています。この名称は、主人公サドラーの運命を象徴しており、シリーズ全体を通じて「追放者」としての彼の孤独な戦いが描かれます。
システムの詳細
エグザイルシリーズのゲームシステムは、RPGとアクションを巧みに融合させたものです。プレイヤーは、トップビュー視点のフィールド画面と、横スクロールのアクション画面を行き来しながらゲームを進めます。以下に、シリーズ全体の共通システムと、各作品ごとの特徴を詳しく解説します。
トップビューと横スクロールの融合
シリーズ全体を通して、フィールド画面はトップビュー視点で描かれています。この画面では、プレイヤーはNPCと会話したり、アイテムを探索したり、クエストを受けたりします。一方、戦闘やアクションシーンは横スクロール視点に切り替わり、プレイヤーはサドラーを操作して敵を倒していきます。このように、フィールドと戦闘が明確に分けられている点が、本シリーズの大きな特徴です。
レベルアップと成長要素
エグザイルシリーズでは、敵を倒して経験値を獲得し、一定の経験値が貯まるとサドラーがレベルアップします。レベルアップにより、攻撃力や防御力が向上し、さらに強力なスキルや魔法を使用できるようになります。特に、戦闘シーンでは武器や防具の装備が重要で、適切な装備を選択することが攻略の鍵となります。
麻薬アイテムの存在
シリーズの中でも特に物議を醸したのが、ゲーム内で使用できるアイテムとして登場する麻薬です。ハシシやヘロイン、コカインといった実際の麻薬がアイテムとして登場し、これらを使用することで一時的にサドラーのステータスを強化できます。しかし、使用後には副作用が現れ、ステータスが下がったり、状態異常に陥るリスクも伴います。この要素は、エグザイルシリーズが単なるアクションRPGではなく、より深いテーマを内包していることを示す一例です。
宗教的・政治的テーマ
エグザイルシリーズは、その世界観やストーリーにおいて、宗教的および政治的なテーマが前面に押し出されています。中世イスラムの雰囲気を忠実に再現しながら、物語はキリスト教、イスラム教、ユダヤ教の三つの宗教に関連する出来事やキャラクターを扱います。特に、唯一神の存在や宗教の起源に関する議論がストーリーの中で繰り広げられ、プレイヤーに宗教や信仰について深く考えさせられる内容となっています。
登場キャラクター
エグザイルシリーズの登場キャラクターは、それぞれが物語において重要な役割を果たしています。以下に、主要なキャラクターとその背景を紹介します。
サドラー (CV: 塩沢兼人)
主人公サドラーは、1104年に生まれた20歳の青年で、アサシン集団のリーダーを務めています。彼は無口でクールな性格を持ち、あらゆる武術と剣技に長けています。サドラーは、敵に苦痛を与えることなく、陶酔の中で倒すことができるという特異な技術を持ち、その冷徹な姿勢がプレイヤーに強い印象を残します。
ルーミー (CV: 皆口裕子)
ルーミーは、アサシンの教祖サッバーフの娘であり、16歳の若さながら8ヶ国語を操る諜報員です。彼女は軽業を得意とし、サドラーのミッションをサポートします。『エグザイルII 〜邪念の事象〜』では、瓦礫に埋もれて死んだかと思われましたが、奇跡的に生き延びていたことが明らかになります。
キンディ (CV: 掛川裕彦)
キンディは、アサシンの戦士養成員であり、32歳の大柄な男です。彼は多くの若いアサシンを育ててきた経験豊富な人物ですが、言葉が不自由で、サーカスに囚われたりするなど、波乱万丈な人生を送っています。キンディは、素手で戦うことが得意で、その強さは折り紙付きです。
ファキール (CV: 矢田耕司)
ファキールは、占星術、カバラ、錬金術、本草術に精通した魔術師であり、サドラーの参謀的存在です。彼は、サドラーの魔法の力を引き出すために重要な役割を果たし、プレイヤーにとっても頼りになる存在です。シリーズの各作品において、彼は様々な形でサドラーをサポートし続けます。
ユーグ・ド・ペイン (CV: 堀秀行)
ユーグ・ド・ペインは、フランスの貴族出身であり、テンプル騎士団の団長を務めています。彼は、サドラーの敵でありながら、物語の進行上、協力を余儀なくされるキャラクターです。ユーグの存在は、物語の核心に迫る重要な役割を果たしており、彼の行動が物語の運命を左右します。
エグザイルシリーズの各作品
XZR エグザイル 破戒の偶像
シリーズの第一作目である『XZR エグザイル 破戒の偶像』は、1988年にPC-8800シリーズおよびPC-9800シリーズ向けにリリースされました。本作は、主人公サドラーが中世イスラム世界を舞台に、数々の敵と戦いながら進めていくアクションRPGです。
ストーリー
物語は、サドラーが暗殺集団アサシンの首領として、セルジュク朝の圧政に立ち向かうところから始まります。彼の最終目的は、現代にタイムスリップし、当時のアメリカ大統領とソ連書記長を暗殺するという驚くべき展開を迎えます。この衝撃的なストーリーは、当時のプレイヤーに強いインパクトを与えました。
音楽
『XZR エグザイル 破戒の偶像』では、中世イスラムの雰囲気をより一層引き立てるため、OPテーマ「ラーガ・バゲシュワリ」とEDテーマ「プラーナ・ヤーマ」の作曲が、当時日本に留学していたイスラム系の大学生に依頼されました。この音楽は、作品全体の雰囲気を決定づける重要な要素となっています。
ゲームソフト
パソコン版
エグザイル 時の狭間へ(XZR II エグザイルII 完結編)
『XZR II エグザイルII 完結編』は、1991年にメガドライブおよびPCエンジンに移植され、『エグザイル 時の狭間へ』のタイトルでリリースされました。これはシリーズの第二作目であり、前作からさらに進化したシステムと深いストーリーを特徴としています。
ストーリー
『エグザイル 時の狭間へ(XZR II エグザイルII 完結編)』の物語は、サドラーがテンプル騎士団のユーグ・ド・ペインから依頼を受け、キリスト教とイスラム教の共通の唯一神を探し出すという使命を帯びるところから始まります。しかし、物語が進むにつれて、ユーグの真の目的が明らかになり、サドラーはその陰謀に巻き込まれていきます。
この作品では、タイムスリップや宗教の捏造といったテーマが扱われ、プレイヤーは現実と非現実が交錯する世界を冒険することになります。さらに、PCエンジン版では、サドラーの旅に新たなキャラクターが加わり、物語が一層複雑に展開します。
アクションとRPGの融合
『エグザイル 時の狭間へ(XZR II エグザイルII 完結編)』では、前作のシステムを踏襲しつつ、さらにアクション要素が強化されています。横スクロールのアクションシーンでは、プレイヤーはサドラーを操作して多彩な敵と戦い、ボスキャラクターとの激闘を繰り広げます。また、麻薬アイテムが引き続き登場し、これらを駆使してサドラーを強化する戦略が求められます。
ゲームソフト
PCエンジン版
メガドライブ版
パソコン版
エグザイルII 邪念の事象
シリーズの第三作目である『エグザイルII 邪念の事象』は、1992年にPCエンジンのスーパーCD-ROM2専用ソフトとして発売されました。前作『エグザイル 時の狭間へ』の続編として、さらに複雑なストーリーと新しいキャラクターが追加されています。
ストーリー
『エグザイルII 邪念の事象』は、前作から半年後の世界を舞台にしています。サドラーは、前作の戦いから生還した仲間たちと共に、新たな脅威に立ち向かいます。この作品では、宗教的なテーマがさらに強調され、主人公たちは新たな陰謀と謎に立ち向かうことになります。
システムの進化
本作では、サドラー以外にも複数のキャラクターが操作可能になり、プレイヤーは状況に応じてキャラクターを切り替えながらゲームを進めます。また、アクションシーンにおける操作性が改善され、よりスムーズな戦闘が楽しめるようになっています。
ゲームソフト
PCエンジン版
評価と影響
エグザイルシリーズは、その革新的なシステムとシリアスなストーリー展開により、ゲーム業界に大きな影響を与えました。しかし、その内容があまりにも前衛的であったため、評価は賛否両論に分かれました。
高評価のポイント
IGNはエグザイルシリーズを「Renovation’s Top 10 Games」の一つに選び、その高い評価を示しました。また、メガドライブ版の翻訳に問題があったものの、ゲームそのものの冒険要素には影響が少なかったとの評価もありました。シリーズの独自性と、アクションとRPGの融合が成功している点が高く評価された一方で、複雑なストーリーや宗教的テーマが一部のプレイヤーに強い印象を与えました。
批判的な評価
一方で、『エグザイルII 〜邪念の事象〜』に関しては、ファミコン通信クロスレビューで厳しい評価を受けています。レビュアーたちは、RPG部分で意味のない情報が多すぎることや、アクション部分のバランスの悪さを指摘し、全体的にまとまりが悪いと評しました。また、ドラッグアイテムの扱いや操作性に関しても批判があり、一部のプレイヤーにとってはプレイが難しいと感じられたようです。
シリーズの影響と後世への影響
エグザイルシリーズは、その独自性とテーマ性から、後のゲーム作品にも影響を与えました。特に、中世イスラム世界を舞台にしたゲームは珍しく、エグザイルシリーズはその先駆けとして位置づけられます。また、宗教的・政治的なテーマを扱うことで、ゲームがエンターテインメントの枠を超えて社会的なメッセージを発信できる可能性を示しました。
まとめ
エグザイルシリーズは、そのユニークな世界観とシリアスなテーマを通じて、他のアクションRPGとは一線を画す存在です。中世イスラム世界を舞台にした物語や、複雑なキャラクター設定、そして大胆な宗教的テーマがプレイヤーに強い印象を残し続けています。シリーズ全体を通じて、操作性やバランスに関する批判もありますが、その独特な作風は今なおファンの心に残っており、硬派なアクションRPGとしての地位を確立しています。エグザイルシリーズは、ゲームの歴史においても特異な存在であり、その魅力は色褪せることなく、今後も語り継がれていくでしょう。