この記事では、「サイキック・ディテクティブ・シリーズ(PDS)」について詳しく紹介します。1989年から1993年にかけてデータウエストから発売されたこのアドベンチャーゲームシリーズは、FM TOWNSをはじめとして様々なプラットフォームで展開され、多くのファンに愛されています。本記事では、PDSの基本的なストーリー、シリーズの特徴、主要キャラクター、作品一覧、そしてリメイク版について詳しく説明します。
サイキック・ディテクティブ・シリーズ(PDS)とは
「サイキック・ディテクティブ・シリーズ」(PDS)は、データウエストが開発したアドベンチャーゲームシリーズです。このシリーズは、1989年から1993年の間にFM TOWNS向けに全7作品がリリースされ、その後リメイク版も制作されました。リメイク版はPCエンジンやWindowsにも移植され、多くのファンに愛され続けています。
サイコダイブの能力を持つ探偵
プレイヤーはサイコダイブという人の心の中に入り込む能力を持つ探偵、降矢木和哉(ふるやぎ かずや)として、現実世界と心象世界を舞台に数々の事件を解決していきます。降矢木はその特異な能力を駆使し、複雑な人間関係や陰謀が渦巻くストーリーを展開していきます。
シリーズの特徴
複雑で大人向けのストーリー
サイキック・ディテクティブ・シリーズ(PDS)の最大の特徴は、その複雑で大人向けのストーリーです。登場人物たちの人間関係や陰謀、裏切りが巧妙に描かれており、プレイヤーは常に緊張感を持って物語を進めることになります。また、セクシーシーンやグロテスクなシーンも含まれており、これらもシリーズの一つの魅力となっています。
美麗なアニメーションとリアルな効果音
当時の大容量メディアであるCD-ROMを活用し、美麗なフルボイスのアニメーションシーンが随所に挿入されています。特に、「VOL.4 Orgel」以降のアニメーションは京都アニメーションが制作しており、その美しさは必見です。また、ゲーム中にはリアルな効果音(水の流れる音、小鳥のさえずり、靴音など)が使用され、臨場感を高めています。
独自システム「DAPS」と「DAPSリプレイ」
シリーズ第3作目からは「DAPS」(Datawest Active Picture System)という独自の動画再生システムが導入され、スムーズな動画再生が可能になりました。さらに、「DAPSリプレイ」という機能により、ゲームクリア後に主要な動画を連続再生してストーリーを振り返ることができ、まるで映画やアニメを観るような感覚で楽しむことができます。
主要な登場人物
降矢木 和哉(ふるやぎ かずや)
主人公である降矢木和哉は、人の心の中に入り込む能力を持つ探偵、サイコアナリストです。その能力は「特A級(スペシャルエー)」とされ、非常に高いサイキックポテンシャルを持っています。しかし、過去に恋人の真行寺 彩の心にダイブした結果、彼女を死なせてしまい、そのショックから一度は活動を辞めます。現在は森崎 梨絵香と恋人関係にあり、再び探偵としての活動を続けています。
真行寺 彩(しんぎょうじ あや)
降矢木の昔の恋人で、事故によって死亡しましたが、その原因は降矢木が彼女の心にダイブしたことにあります。彩は物語の中で頻繁に言及され、彼女の存在が降矢木にとって大きな影響を与え続けます。
森崎 梨絵香(もりさき りえか)
降矢木の現在の恋人であり、彼の心の支えでもあります。彼女はわがままな性格で、裕福な生活を送っていますが、降矢木との関係を通じて成長していきます。実は真行寺 彩の妹であり、物語の中で重要な役割を果たします。
その他のキャラクター
蘭 香芳(らん こうほう)
サイコアナリストであり、降矢木の友人。短く切ったショートボブの黒髪が印象的な東洋系の美女(美男)で、ヘルマフロディテ(両性具有者)であるため一人孤独に生きてきました。シリーズを通して降矢木と梨絵香の共通の友人となり、彼らを助けます。
樋渡 京介(ひわたし きょうすけ)
降矢木の同業者であり、助っ人として登場します。特に「Orgel」や「SOLITUDE」で重要な役割を果たし、蘭 香芳との関係も深まります。
真行寺 剛(しんぎょうじ つよし)
彩の父であり、シリーズの黒幕的存在です。誇大妄想狂であり、自分の理想実現のために娘の彩や梨絵香を利用します。「プロジェクトAYA」を進めるため、降矢木に偽の記憶を植え付け、彩をダイブの失敗で殺したと偽装します。
土屋 英二(つちや えいじ)
真行寺剛の部下であり、サイコアナリストでもあります。降矢木に偽の記憶を植え付けた張本人で、シリーズ中盤から終盤にかけて主要な敵対キャラクターとして登場します。
森崎 さやか(もりさき さやか)
梨絵香の母であり、剛の理想のために彩を利用することに反対し、梨絵香を連れて離婚しました。梨絵香が学生時代に病死しましたが、作中では幽霊として登場し、降矢木を励まします。
ローズマリー(ろーずまりー)
「Nightmare」から登場するキャラクターで、夢の中で降矢木に助けを求めてきた少女。ベラスケスの一族の末裔で、『生きる本』として知られています。精神世界での出来事やポランスキー神父との戦いが描かれます。
ポランスキー神父(ぽらんすきーしんぷ)
「Nightmare」から登場する謎のサイコアナリストで、自らを真理の探求者と称し、ローズマリーを狙います。彼の知識と能力は高く、降矢木やローズマリーにとって大きな脅威となります。
サイキック・ディテクティブ・シリーズ(PDS)の一覧
サイキック・ディテクティブ・シリーズ(PDS)は1989年から1993年にかけてFM TOWNSで全7作品が発売されました。各作品は独立したストーリーを持ちながらも、共通のキャラクターと世界観を共有しています。
「ソリチュード 下巻」の発売後、データウエストは1993年以降、シリーズ5作品のリメイクを行いました。リメイク版ではシステムやUIの改良、初期作品へのDAPSおよびDAPSリプレイの搭載、アニメーションシーンの再制作、キャラクターデザインや設定の修正が行われました。また、3作目の「AYA」と4作目の「orgel」のみ、「PCエンジン」及び「メガCD」でも展開されています。
VOL.1: インビテーション 影からの招待状(INVITATION)
データウエストから1989年3月に発売されたFM-TOWNS用アドベンチャーゲームで、サイキック・ディテクティヴ・シリーズ(PDS)の第1弾です。リメイク版ではタイトルが「INVITATION」となりました。
ストーリー
主人公・降矢木和哉は、かつて恋人をサイコダイブの際の過失で失い、その悔恨からサイコアナリストとしての仕事を辞めていました。ある日、白鳥財閥の顧問弁護士から依頼が来ますが、一度は断ります。しかし、過去の出来事をネタに脅迫され、降矢木はやむなく地方の旧家・白鳥家へ赴きます。そこで彼を待っていたのは、意識不明の美少女・白鳥麻美。彼女にサイコダイブするため、降矢木は白鳥家に滞在し、情報収集を始めます。
Windows95版
VOL.2:メモリーズ(MEMORIES)
1989年10月に発売されたサイキック・ディテクティヴ・シリーズ(PDS)の第2作で、FM-TOWNS用アドベンチャーゲームとして発売されました。
ストーリー
降矢木和哉は恋人の森崎梨絵香に去られ、傷心の日々を送っていました。そんなある日、事務所に後藤翔子が訪れ、父親の記憶を消してほしいと依頼します。降矢木はこの奇妙な依頼を引き受け、老人の企みに巻き込まれていきます。
Windows95版
VOL.3:アヤ(AYA)
サイキック・ディテクティヴ・シリーズ(PDS)の第3作目で、1990年5月に発売されました。人の心に潜入する能力を持つ探偵、降矢木和哉が奇怪な事件を解決するアドベンチャーゲームで、降矢木和哉が再びサイキックアナリストとしての仕事に巻き込まれるストーリーとなっています。
ストーリー
降矢木はかつてサイキックアナリストとして活躍していましたが、ある事件をきっかけにその仕事を休業していました。ある日、同じアナリストである桐生五郎が訪れ、降矢木に「ある老人の胸に腫瘍があるか確認する」という依頼をします。最初は怪しむものの、多額の依頼料に惹かれた降矢木は依頼を引き受け、老人の屋敷を訪ねます。しかし、依頼を終えて戻ると、恋人の森崎梨絵香が失踪していました。
PCエンジン版
メガCD版
Windows95版
VOL.4:オルゴール(Orgel)
1991年4月に発売されたサイキック・ディテクティヴ・シリーズ(PDS)の第4作で、FM-TOWNS用アドベンチャーゲームとして発売されました。リメイク版ではアニメーション部分を京都アニメーションが制作しています。
ストーリー
降矢木和哉は有名建築家の妻、影藤智奈子から依頼を受けます。依頼内容は、屋敷「奇談亭」に来るゲストの中に、自動人形を盗もうとする者がいるため、それを阻止してほしいというものでした。降矢木は奇談亭に赴き、情報収集を行いながら犯人を探し出します。しかし、屋敷の主人である智奈子は姿を見せず、やがて召使いの老婆も消えてしまいます。そんな中、予期せぬ来客が訪れ、物語は予想外の展開を見せます。
PCエンジン版
メガCD版
Windows95版
VOL.5:ナイトメア(Nightmare)
1991年11月にデータウエストより発売されたPC用のアドベンチャーゲームで、サイキック・ディテクティヴ・シリーズ(PDS)の第5作目です。
ストーリー
降矢木は毎夜のように悪夢に悩まされていました。その夢では、嵐の夜に助けを求める少女が現れますが、近づくことができません。ある夜、その夢は惨劇へと変わり、少女がナイフで胸を切り裂かれる場面を目撃します。この悪夢が何を意味するのか、少女が現実に存在するのか、降矢木はその謎を解き明かすために行動を開始します。
Windows95版
FINAL:ソリチュード 上巻(Solitude Part1)
『ソリチュード(上巻)』はデータウエストが開発を行い、富士通 FM TOWNS用として1992年11月27日に発売されたサイコホラーアドベンチャーゲームです。サイキック・ディテクティヴ・シリーズ(PDS)の第6弾であり完結編の前編にあたります。
ストーリー
ある日、降矢木の病室に男が訪れ、「真行寺彩は生きている」と告げます。かつての恋人である彩は、降矢木が心を治療中に事故で他界したはずでした。男は彩の生存を告げ、再度ダイブするように強要します。しかし、降矢木はサイキック能力を失っていました。彩の生存の真実、蘭香芳の運命、梨絵香の出生の秘密が徐々に明らかになり、物語はクライマックスに向かいます。
Windows95版
FINAL:ソリチュード 下巻(Solitude Part2)
『ソリチュード(下巻)』は、データウエストが開発し1993年3月19日にFM TOWNS用として発売されたサイコホラーアドベンチャーゲームです。サイキック・ディテクティヴ・シリーズ(PDS)の第6弾であり、『ソリチュード(上巻)』の後編にあたります。
ストーリー
梨絵香の捜索を諦めた降矢木は、ローズ、樋渡と共に真行寺邸へ向かいます。そこで彼らは、かつての恋人である真行寺彩の目覚めを待ちます。彩の逃避した自我を求めて、3人はダイブを行います。虚無の世界で降矢木が目にしたのは、過去の記憶でした。プロジェクトAYAの真実、彩の意識の回復、そして梨絵香の行方が明らかになり、物語は感動的な結末を迎えます。
Windows95版
【補足】FM TOWNS(エフエムタウンズ)とは
FM TOWNS(エフエムタウンズ)は、1989年に富士通が発売した32ビットのパソコンです。このパソコンは、世界で初めてCD-ROMドライブを標準で搭載し、当時としては非常に先進的なマルチメディア機能を持っていました。FM TOWNSは高性能なグラフィックや音響機能を備え、ゲームや教育用ソフトがたくさんありました。
最初のモデルは2種類あり、それぞれメインメモリの容量が異なっていました。また、縦型の筐体(きょうたい)にはCD-ROMドライブやフロッピーディスクドライブが前面に配置されていて、使いやすいデザインになっていました。CPUには当時高性能だったインテルの80386が使われており、特に音楽や画像を扱う能力が優れていました。
FM TOWNSの特徴は、教育用やゲーム用のソフトが豊富だったことです。さらに、テレビに接続して使えるマーティー(Marty)という機種もありました。発売当初はゲーム「アフターバーナー」などが注目されましたが、プログラムの完成度に不満の声もありました。しかし、富士通はCMに人気アイドルを起用したり、大規模なイベントを開催するなどして、多くの人にFM TOWNSを知ってもらう努力を続けました。
その結果、徐々にユーザーが増え、特に若い世代やクリエイターに支持されるようになりました。FM TOWNSは1997年まで販売され、最終的には約50万台が売れました。このパソコンは、その革新的な機能と富士通の積極的なマーケティング戦略により、当時のパソコン市場に大きな影響を与えたのです。
まとめ
「サイキック・ディテクティブ・シリーズ(PDS)」は、その独自のストーリーとキャラクター、美麗なアニメーション、そして革新的なシステムで多くのファンに愛されてきました。シリーズを通して描かれる降矢木和哉の成長と葛藤、人間関係の複雑さ、そして陰謀が織りなすストーリーは、今なお多くの人々の心に残っています。これからもPDSの魅力は色褪せることなく、新たな世代のゲーマーにも受け継がれていくことでしょう。