本記事では、PCエンジンから始まりプレイステーションへと移植された「アルナムの牙」シリーズについて紹介します。このシリーズは、異形の生物と戦う獣族の戦士たちの冒険を描いたRPGであり、社会問題を背景にした深い物語が特徴です。シリーズの第一作「アルナムの牙 獣族十二神徒伝説」から続編「アルナムの翼 焼塵の空の彼方へ」までの変遷、ゲーム内容、登場人物について詳しく見ていきましょう。
シリーズの魅力
社会的テーマの探求
アルナムの牙シリーズの最大の魅力は、人種差別や環境破壊といった重厚な社会的テーマをゲーム内で深く探求している点です。プレイヤーはただ単にゲームを進めるだけでなく、これらの問題について考えさせられることで、ゲームを通じた学びや洞察を得ることができます。
独特のゲームシステム
シリーズは、獣化や合体といったユニークな戦闘システムを採用しており、これらの要素が戦略的な楽しさを大きく高めています。プレイヤーは様々な獣の能力を駆使して戦い、深い戦略性を享受することができます。
豊富なキャラクター
各作品には個性豊かなキャラクターが登場し、彼らの背景や物語がシリーズ全体のストーリーに深みを加えています。獣族と人間との関係や、キャラクター同士の絆など、人間ドラマも見どころの一つです。
アルナムの牙 獣族十二神徒伝説
1994年に発売された「アルナムの牙 獣族十二神徒伝説」は、PCエンジンSUPER CD-ROM2用ロールプレイングゲームとして、またプレイステーション版ではアドベンチャーゲームとして、多くのファンを魅了し続けています。この作品は、獣族と人間が共存する世界「アルナム」を舞台に、人種差別という深刻なテーマに挑んだ作品です。
ゲーム内容とシステム
ゲームの目的
プレイヤーは主人公「ケンブ」を操作し、アルナムを襲う異形の生物「肉叢(ししむら)」から人類を救うことが目的です。獣族の代表者たちと共に、肉叢の脅威からアルナムを守る冒険が繰り広げられます。
戦闘システム
戦闘はターン制のコマンドバトル形式を採用しており、パーティーは最大3人まで組むことができます。特徴的なシステムとして「獣化」と「合体」があり、キャラクターはそれぞれの獣へ変化して戦うことが可能です。また、2人一組で合体攻撃を行い、大ダメージを与えることもできます。
経済システム
ゲーム内通貨として「露夢(ろむ)」が使用されます。戦闘では直接お金を手に入れるのではなく、倒した肉叢の数に応じて換金所でお金と交換するシステムが採用されています。
ストーリー
背景
アルナムは人間と獣族が共存する世界。しかし、獣族は人間から蔑まれ、忌み嫌われる存在でした。ある日、肉叢という異形の生物が出現し、人々の生命を脅かし始めます。
物語の展開
主人公ケンブは、肉叢からの脅威に立ち向かうため、他の獣族の代表者たちと共に中央府の清都へと向かいます。彼らは獣族がなぜ人間から迫害されるのか、その真実を知ることなく戦いに身を投じます。
登場人物
ケンブ
- 属性: 戌(ジュツ)族
- 特徴: 犬に獣化する能力を持つ17歳の青年。主人公であり、強い正義感を持つ熱血漢。時にマイペースで周囲の話を聞き逃すことも。
トエイ
- 属性: 卯(ボウ)族
- 特徴: 兎に獣化する能力を持つ17歳の少女。快活で心優しい性格。本来の代表が怪我をしたため、代わりに選ばれる。
シャッコ
- 属性: 寅(イン)族
- 特徴: 虎に獣化する能力を持つ23歳の男性。義理堅く、一本気な性格。妹のマトラには頭が上がらない。
スズメ
- 属性: 午(ゴ)族
- 特徴: 馬に獣化する能力を持つ21歳の女性。明るく、サバサバした性格のしっかり者。
トバリ
- 属性: 酉(ユウ)族
- 特徴: 鳥に獣化する能力を持つ19歳の青年。聡明で、ケンブとは気が合う。
タランダ
- 属性: 巳(シ)族
- 特徴: 蛇に獣化する能力を持つ25歳の女性。気が強く口は悪いが、根は優しく姉御肌な性格。
バッソ
- 属性: 子(ス)族
- 特徴: 鼠に獣化する能力を持つ18歳の男性。少々ずる賢く、お調子者。シャッコを慕っている。
ヨウガン
- 属性: 未(ミ)族
- 特徴: 羊に獣化する能力を持つ20歳の青年。気が弱く、戦うことを好まない。
ヒエン
- 属性: 申(モウ)族
- 特徴: 猿に獣化する能力を持つ16歳の少年。頭脳派でプライドが高い。
ギユウ
- 属性: 丑(チュウ)族
- 特徴: 牛に獣化する能力を持つ27歳の男性。無口でポーカーフェイスな力自慢の大男。
ランチョ
- 属性: 亥(ガイ)族
- 特徴: 猪に獣化する能力を持つ35歳の男性。猪突猛進で豪快な性格。代表の中では唯一の妻子持ち。
リョウスイ
- 属性: 辰(シン)族
- 特徴: 龍に獣化する能力を持つ青年。素性は謎に包まれている不思議な存在。
アルナムの翼 焼塵の空の彼方へ
「アルナムの翼 焼塵の空の彼方へ」は、1997年にライトスタッフから発売されたPlayStation用RPGで、「アルナムの牙 獣族十二神徒伝説」の続編にあたります。この作品は、前作の世界観を継承しつつ、環境破壊という新たなテーマを掘り下げています。
ゲーム内容とシステム
物語の背景
前作から五万年後のアルナムを舞台にしており、前作の英雄たちの活躍から長い時を経て、再び世界が危機に瀕しています。輝晶石によるエネルギー産出の代償として、有毒なガスが発生し、環境汚染が進行している状況です。
ゲームシステム
前作の戦闘システムを継承しつつ、より洗練されたグラフィックとサウンドで、新たな物語を展開します。プレイヤーは、新しい主人公クスミダを中心に、輝晶石による環境汚染と戦うために旅立ちます。
ストーリー
物語の展開
五万年の時を経て、アルナムは環境破壊に直面しています。主人公クスミダは、孤児院で育った若者で、自らの出生の秘密と環境汚染の謎を解き明かすため、仲間たちと共に冒険に出ます。彼らの旅は、過去の英雄たちの遺志を継ぎ、アルナムの未来を救うための壮大な物語です。
登場人物
クスミダ
- 年齢: 14歳
- 特徴: 本作の主人公。孤児院で育ち、スズメに想いを寄せています。行動的で正義感が強いが、その一方で少年らしい無邪気さも持ち合わせています。環境汚染の真実を追求する旅に出ます。
カリン
- 年齢: 13歳
- 特徴: クスミダと同じ孤児院に住む幼馴染。ハキハキとした性格で、孤児たちからの信頼も厚い。過去のトラウマを抱えつつも、強い意志を持って行動します。
シュレン
- 年齢: 16歳
- 特徴: 両親を失い、機械に興味を持つ青年。ブライの町で働きながら、機械に関する深い知識を持っています。クスミダたちの冒険に技術面で大きく貢献します。
ジュナ
- 年齢: 16歳
- 特徴: 母親を探すために旅をする少女。裕福な家庭に生まれますが、家族を失い孤独な戦いを強いられます。気が強く、時には感情的になることも。
クレハ
- 年齢: 13歳
- 特徴: ヒエンの娘で、メカニックの才能を持つ。父譲りの頭脳明晰さで、物語の中で重要な役割を果たします。彼女の技術力が、クスミダたちの冒険に欠かせないサポートを提供します。
エニクイ
- 年齢: 14歳
- 特徴: トエイの息子であり、マリエーンの子。トエイに眼の光を取り戻すため、浮遊岩盤から地上へと向かう。他人を見下す傾向がありながらも、戦いの腕前は確かです。
マユコダ
- 年齢: 15歳
- 特徴: シャッコとタランダの娘。エニクイとは幼馴染みの関係。母から受け継いだ強力な気法を操る能力を持ち、物静かながらも内に秘めた強さを持つ。
エンギ
- 特徴: マヤ公国を統治する大公。しかし、彼の背後にはより大きな力が操っていることが示唆されています。
ギュロス
- 特徴: 真の敵役として登場する謎多き人物。エンギ大公を操り、アルナムの世界に暗い影を落とします。
ホクロク & トウバン
- 特徴: 前作の獣族代表者。記憶を失いながらも、それぞれ異なる立場で物語に関わっていきます。
シリーズの一覧
アルナムの牙 獣族十二神徒伝説
PCエンジン版
人種差別をテーマにした作品で、主人公「ケンブ」を操作し、アルナムと呼ばれる世界に突如出現した肉叢(ししむら)から人類を救出する事が目的となります。お金は戦闘で倒した肉叢の数などによって換金所でお金と交換するシステムとなっています。また、イラストレーターの木村明広が企画・総監督を務めています。
プレイステーション版
プレイステーション版『アルナムの牙 獣族十二神徒伝説』は、原作の魅力を引き継ぎつつも、新たなジャンルとして生まれ変わった作品です。アドベンチャーゲームとしての深い物語と、RPG要素の融合により、プレイヤーはアルナムの世界をより一層楽しむことができます。美しく向上したグラフィックとサウンドは、この不思議な世界への没入感を高めてくれます。
アルナムの翼 焼塵の空の彼方へ
個性豊かな仲間達と重厚な物語が魅力的な『アルナムの牙』の5万年後の世界を描いた続編です。30分にも及ぶ美麗アニメーションを収録し、テンポの良さを追求したシンボルエンカウントバトル等、新要素が満載です。スリル満点の3Dポリゴンで描かれた広大なフィールドを歩き、環境破壊により汚染された世界を救うことを目的としています。
まとめ
「アルナムの牙」シリーズは、ただのファンタジーRPGではなく、人種差別や環境問題といった社会的なテーマを背景にした深いストーリーが魅力です。異形の敵と戦う獣族の戦士たちの冒険を通じて、プレイヤーに多くのメッセージを投げかけています。ゲームシステムもユニークで、獣化や合体攻撃など、他のRPGにはない要素が満載です。このシリーズは、ゲームを楽しむだけでなく、人間関係や社会について考えさせられる作品と言えるでしょう。